
2月に入りますと、当山では(おそらくどの寺院でも)涅槃図と呼ばれるお釈迦さまがお亡くなりになられた様子が描かれた絵をお掛けし、供物を供え、お経を上げて釈尊のご遺徳を偲びます。「涅槃」とはインドのサンスクリット語でニルヴァーナといい、一切の煩悩や欲から解放された境地、すなわち六道輪廻から離れたことをさします。釈尊がお亡くなりになることを、涅槃に入ることから入滅ともいい、2月15日が正当日です。
さて、当山の涅槃会では読経と梅花をお唱えします。梅花は以下の四曲お唱えします。
「大聖釈迦如来涅槃御和讃」「大聖釈迦如来御詠歌(不滅)」「無常御和讃」「無常御詠歌(月影)」です。特に「大聖釈迦如来涅槃御和讃」の歌詞は釈尊ご入滅(亡くなること)のご様子をわかりやすく表現されています。『曹洞宗宗務庁 ~梅花に学ぶ~』より引用
【一番の歌詞】
拘尸那のほとり風おちて
拘尸那城の辺りは、昨夜の風もやんで
流れはむせぶ如月の
川の流れはむせび泣くように水音を立てています
望の月影きよけれど
2月15日の満月は清く光り輝いていましたが
儚く雲にかげりゆく
今は哀しくも雲間に隠れてしまいました
=====================
【二番の歌詞】
双樹の沙羅に咲きみちて
沙羅の双樹は、真っ白に咲き満ちていましたが
ま白き花は匂えども
風もないのにはらはらと散ってゆきます
散るを定めの花なれば
花はしょせん散り行く定めを背負っているのです
はらはら散りてすべもなし
同じようにお釈迦さまのお命も、諸行無常、是生滅法の教えのとおりで、止めようとしてもその術はありません

生あるものは必ず滅すという道理を自らの死によって弟子たち信者たちにお示しになられたお釈迦さま。永遠不滅なものなど存在しないのだから、生死も同じように執着せずありのままに受け入れよと仰りたかったんだと思います。私たちもこの最後の教えを胸中に深く刻み込み、怠ることなく日々精進して参りたいと思います。その決意を新たにするのが涅槃会なのです。